30秒まとめ
- 貸せば毎月の管理費を払う側から、家賃を受け取る側に変わる。ただし貸せる状態にするまでに費用がかかる
- いちばん見落とされるのが契約の種類。普通借家契約だと、貸主の都合で返してもらうのは簡単ではない
- いずれ売るつもりなら、期間を区切れる定期借家契約という選び方がある
- 家賃収入には確定申告が必要になることがある。金額の目安を先に確認しておく
実家を売るほど踏ん切りがつかない。かといって、空けたまま管理費を払い続けるのも気が進まない。
そこで出てくるのが「貸す」という選択肢です。人が住めば家は傷みにくくなりますし、収入も入ります。悪くない話に思えます。
ただ、貸すという判断には、あとから取り消しにくい部分があります。この記事では、貸せる状態にするまでの費用、個人で貸すときの進め方、そして知っておきたいデメリットを整理します。
貸すことが向いている家、向いていない家
まず、どんな家でも貸せるわけではありません。目安を挙げます。
| 向いている | 向いていない |
|---|---|
| 駅や学校、病院が近い | 公共交通から遠く、車が必須 |
| 水回りがまだ使える状態 | 雨漏りやシロアリの被害がある |
| 近隣に賃貸の需要がある | 周辺にも空き家が目立つ |
| 自分は戻る予定がない | 数年後に戻る可能性がある |
意外に思われるかもしれませんが、「数年後に戻るかもしれない」場合は慎重になったほうがよいです。理由は次に書く契約の話につながります。
また、地域に賃貸の需要があるかどうかは、自分では判断しづらい部分です。近隣の不動産会社に聞けば、そのあたりで実際に借り手がつくのか、家賃がいくらぐらいになるのかを教えてもらえます。
見落とされやすいのが「契約の種類」

ここがこの記事でいちばん伝えたい部分です。
住宅の賃貸契約には、大きく2つの形があります。
- 普通借家契約……一般的な形。契約期間が来ても、借り手が住み続けたいと言えば基本的に更新されます。貸主の側から終わりにするには正当な事由が求められ、簡単ではありません
- 定期借家契約……期間を区切る形。決めた期日で契約が終わります。再契約は双方の合意があれば可能です
何が問題になるかというと、「とりあえず貸しておいて、売りたくなったら返してもらおう」が通らないことがある点です。普通借家契約で貸した場合、借り手が住み続けたいと言えば、こちらの都合だけでは動かせません。
入居者がいる状態でも売ること自体はできますが、自分で住みたい人には売れなくなるため、買い手が限られ、価格も下がりやすくなります。
いずれ手放すつもりがあるなら、期間を区切れる定期借家契約を検討する価値があります。家賃はやや下がる傾向がありますが、出口を自分で決められます。不動産会社によっては普通借家を前提に話が進むことがあるので、こちらから聞いてみてください。
貸せる状態にするまでにかかる費用
長く空いていた家は、そのままでは借り手がつきにくいのが実情です。かかる費用の目安を挙げます。
- 家財の撤去……残置物があると内見もできません。まずここから
- ハウスクリーニング……水回りを中心に。印象を大きく左右します
- 設備の交換……給湯器、エアコン、コンロなど。古いまま貸すと入居後に故障し、貸主の負担で直すことになります
- 内装の補修……壁紙や畳、傷んだ床
金額は状態によって大きく変わります。数十万円で済むこともあれば、水回りをまとめて入れ替えると百万円を超えることもあります。先に見積もりを取り、何年で回収できるかを計算してから決めるのが安全です。
家財の撤去については、実家の片付けはどこから?順番と費用の目安と実家の片付けを業者に頼む|費用の内訳と失敗しない選び方にまとめています。
なお、修繕費の一部を補助している自治体もあります。空き家バンクへの登録が条件になっていることが多いので、市区町村の窓口で聞いてみてください。制度の探し方は実家じまいの補助金はある?使える制度の探し方と同じ流れで進められます。
個人で貸すときの進め方
大家の経験がなくても貸すことはできます。管理をどこまで自分でやるかで、手間と費用が変わります。
不動産会社に任せる場合
入居者の募集、契約、家賃の集金、入居中の対応までを任せる形です。管理料は家賃の5%前後が目安とされています。
遠方に住んでいる場合、実質的にこれ以外の選択肢は取りにくくなります。エアコンが壊れた、水が漏れたといった連絡に、その都度対応できるかを考えてみてください。
自分で管理する場合
管理料はかかりませんが、入居者からの連絡を直接受けることになります。家が近く、時間の融通がきく方には向いています。
募集だけを不動産会社に頼み、入居後の対応は自分でやるという折衷もあります。まず募集だけ依頼して、様子を見てから決めるという進め方でも構いません。
知っておきたいデメリット
収入が入る一方で、引き受けることになるものもあります。
- 修繕の負担は貸主側……設備が壊れれば直す義務があります。給湯器やエアコンは高額になりがちです
- 空室のあいだも費用は出ていく……固定資産税、保険、管理料。借り手がつかない期間もあります
- 確定申告が必要になることがある……家賃収入は不動産所得にあたります。一定額を超えると申告が必要です。税務署や税理士にご確認ください
- 売却の自由度が下がる……前述のとおり、入居者がいると買い手が限られます
- 思い出の家が他人の生活の場になる……気持ちの面で引っかかる方もいます
最後の点は数字に表れませんが、実際に迷いどころになります。壁に穴を開けられても、庭木を切られても、通常の使用の範囲であれば口を出しにくくなる。そこを受け入れられるかどうかは、先に考えておいたほうがよい部分です。
貸すか、ほかの道を選ぶか
判断の材料は、結局のところ次の3つに集約されます。
- 貸せる状態にするのに、いくらかかるか
- その地域で、家賃はいくらで、借り手がつきそうか
- いずれ手放すのか、持ち続けるのか
この3つを、売った場合・解体した場合と並べて比べると、貸すことが自分の状況に合っているかが見えてきます。1社の話だけで決めないほうが判断を誤りにくいのは、貸す場合も同じです。賃貸に強い会社と売買に強い会社とでは、勧めてくる出口が変わります。
貸さずに持ち続ける場合は、家を保たせるための管理が必要になります。やることの頻度と代行サービスの費用は空き家の管理はどうする?やることの頻度と代行サービスの費用にまとめています。
住む・貸す・売る・解体するの4つを費用と手間で比較した内容は実家を処分するか、残すか。判断の分かれ道にあります。誰に相談すればよいか分からない段階なら、実家じまいは誰に相談する?窓口の選び方と相談前の準備から読んでみてください。
よくある質問(FAQ)
まとめ
空き家を貸せば、管理費を払う側から家賃を受け取る側に変わります。人が住むぶん家も傷みにくくなります。ただし、貸せる状態にするまでの費用と、修繕の負担を引き受ける覚悟が前提です。
そして、いちばん見落とされやすいのが契約の種類です。普通借家契約で貸すと、貸主の都合で返してもらうのは簡単ではありません。いずれ売るつもりがあるなら、期間を区切れる定期借家契約という選び方を検討してみてください。
貸す・売る・解体するのどれが合っているかは、家の状態と、その地域に需要があるかで変わります。数字を並べて比べてみると、迷いが整理されます。
制度や費用は時期・自治体・個別の状況によって変わります。実際の判断は専門家や自治体の窓口でご確認ください。
